何故か私、不良の彼女になりました
「マキちゃん、もしかして…」
「…っ!」
彼女はさらに怯えた表情をするが、円香はそのまま言葉を繋げる。
「…香水、つけてきたんですか?」
辺りに教師がいないか見渡し、マキの顔を覗き込んだ。
「……」
彼女を心配そうに、けれど未だキョロキョロする少女だけを視界に捕らえ、ぱちくり、目を瞬かせた。
「………、は?」
漸く出た言葉はそれだった。三人とも、呆気にとられたような顔をしてまじまじと円香を見つめる。
「え?」
その周りの様子に、キョトリンと、可愛く目をパチパチさせる。
「違いますか?」
不思議なものを見るような目でコテン、と首を傾げた。
はっと素早く我に返ったマキは、おばさんの真似事をするように自身の右手をブラブラ前後に振る。
「そ、そうなのよ! 実は今日、香水つけてきちゃって…」
慌てながらも、少し安心したように肯定した。