何故か私、不良の彼女になりました
円香はというと、英二にマキが威圧をかけられているとは知らず、まだひとり頷いていた。
(あ、そういえば…)
「細川先輩…、あの…」
彼女に呼ばれ、マキから円香に視線を移す。聡も腕組みをした態勢のまま、彼女を眺めた。
「どうしてマキちゃんの名前を…?」
不思議そうに瞳を大きくする円香。英二は先程の笑みとは違う、爽やかな笑みをつくる。
「…ん? あぁごめんね。君が呼んでいたからそれで」
「そ、そう、ですか…」
(わ、私のせいで…)
ガックリ、内心落ち込む。
彼女は申し訳なさそうにマキを視界に照らすと、彼女はにっこり笑ってみせた。
それはまるで、円香のせいじゃない、と主張しているかのように。
「……そういや俺、コイツの名前知らねぇな」
そんなふたりを若干気にしつつも、今頃か、と内心突っ込みたくなった英二。しかしそんな彼を聡は気に止める様子はなく、ちら、と横目でマキを見やる。
「…興味ねぇけどお前、名前なんて言うんだ?」
聡は心底面倒くさそうにしているが、彼は興味津々のようだ。