何故か私、不良の彼女になりました
だが、マキは円香よりも一歩早く手を伸ばし、彼女の曲がった赤色のネクタイを直してあげた。
「……ありがとうございます、マキちゃん」
そう言って、えへ、と笑う円香。それを目にし、彼女の表情は少し曇る。
「……円香」
「はい?」
ニコニコとしながらも、不思議そうに小首を傾げる。
「……、円香がネクタイ曲がってるのに気が付かないなんて、珍しいね」
「そう…、ですか?」
「うん」
彼女はいつも、制服をきちんと着る。ネクタイが曲がることもなければ、ワイシャツの襟元が可笑しいこともない。
それは中学の時も高校でも変わっていなかった。
そんな円香は、今日初めてネクタイが曲がっていた。
つまり、それは。