寸止めの恋心







「ほんっとごめん!」


そう言ってあたしの目の前で両手を合わせ、頭を下げているのは、いつものように茶色い髪をポニーテールにした彼女だった。


名波 リカ。高校に入ってから仲良くなった、あたしのトモダチ。親友。


「いいよ、別に、気にしてないから」


それより――と言いながらあたしの目を移した扉の先には、リカを待っている背の高い彼がいた。

それに気付いたリカは、「今度ちゃんと埋め合わせするから!ごめんね!」と言って、素早く鞄を肩にかけて行ってしまった。


「楽しんできなよー」


リカにそう言いながらあたしは、これからなにをするか考えた。

そしてすぐに、ケータイを取り出して、電話をかける。


相手がすぐに出てくれるのもいつものことで、3コールもすれば彼の声があたしの耳に入る。



< 2 / 5 >

この作品をシェア

pagetop