寸止めの恋心
「ほんっとごめん!」
そう言ってあたしの目の前で両手を合わせ、頭を下げているのは、いつものように茶色い髪をポニーテールにした彼女だった。
名波 リカ。高校に入ってから仲良くなった、あたしのトモダチ。親友。
「いいよ、別に、気にしてないから」
それより――と言いながらあたしの目を移した扉の先には、リカを待っている背の高い彼がいた。
それに気付いたリカは、「今度ちゃんと埋め合わせするから!ごめんね!」と言って、素早く鞄を肩にかけて行ってしまった。
「楽しんできなよー」
リカにそう言いながらあたしは、これからなにをするか考えた。
そしてすぐに、ケータイを取り出して、電話をかける。
相手がすぐに出てくれるのもいつものことで、3コールもすれば彼の声があたしの耳に入る。