寸止めの恋心



通話が切れて、ケータイからはおなじみの『ツ――』という無線音が聴こえる。


(たかが電話に、なんでこんなに緊張するの――)


あの瞬間を見てしまったおかげで、ここ最近のあたしの調子はどうにもおかしい。

ぜんぶ、ぜんぶ、京ちゃんのせい……



誰も居ない教室で自分の机につっぷして、記憶をたどる。


あのあとの事はきれいサッパリ忘れてしまったみたいだし。

どうやって家路についたのかも覚えていない。



ただ、次の日起きたら前日の服装のままで、そして、7時過ぎにはいつもと同じように1回からベーコンの香りがしていた。



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