NAO
『直?』

「...うん。」

『先生と会ってみて、どうだった?』

「元気...じゃなかったな。」




とても元気とは、言えなかった。


病室を出て、帰ろうとした時、誰かに呼び止められた。


―加地の奥さんだった。


初めて見たけど、静かで、独自の時間を持っているような不思議な人だった。


その人に、はっきり言われた。


“もう主人は長くないんです。”と。


そうか...
と思った。


だから、いきなり泣きたくなったり、
怖くなったりしたのかな。
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