【完】会長様はご機嫌ナナメな皇帝閣下
「俺には分からない世界だわ。おーこわ」


石葉兄弟の中で、唯一全く格闘技が出来ない影兄が呟く。運動能力は高いのに勿体ないって父さんが良く嘆いてたっけ。


「なんでー。いいじゃん。殴り合いの世界。スカッとすんじゃん」


「俺は人叩くより、ギターの弦とかキーボードの鍵盤叩いてたい人間だもの」


そういえば、学校とは違うところで作ったバンドが最近人気らしく、レコード会社に目を付けられているらしい影兄。


それを思うと、影兄がドンパチしてたらヤバイか。影兄のギターを弾くための指と歌うための喉は、私でいう戦うための手足くらいに大切な指なのだろう。格闘技には向いていない。


なんて、リングをぼんやり見ていた私の横で、影兄が鳴り響くスマホを手に取る。


どうせ愛しの彼女からだろう。我が兄ながら、犬が尻尾振ってるみたいだ。
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