【完】会長様はご機嫌ナナメな皇帝閣下
どうしたんだ、一体。そして、私はどうすれば良い。私、こんな大人な、男臭い顔をする春風なんか知らない。


「……嫌なんだよね。会長に、取られるのが」


「…………は、何が?何が会長に取られるんだ?」


主語がないからわけ分からん。春風は、何が嫌で今日ずっと浮かない顔をしてたってんだ。そんなんじゃ、春風の味方になってやることは出来ない。


戸惑って固まっている私に、ふいに春風がズイーッと近付いてくる。


な、なんだなんだ!?何なんだよ春風。今日の春風なんなんだホントに!


春風は、昔の知ってるそれとは違う、喉仏をフル活用したような低い、何だか色を帯びた声で囁く。


「そんなのひーちゃんに、決まってね?」


…………は、は、はぁ?パードゥン?何、今の、何?


私が目をぱちくりさせてると、春風が、やっぱり私が一度も見たことない、男の顔で笑った。


やだ、こんなの春風じゃねぇ。こんな顔出来る春風なんか、春風らしくねぇ。


でも、私が春風の何を知ってる?知ってるのは小学校の頃の春風だけ。一番多感な中学生の春風の隣を、私は歩んでいない。
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