【完】会長様はご機嫌ナナメな皇帝閣下
後ろから、ぬっと顔が伸びて来て、私の指ごと、会長はマフィンを吟味する。


「形はあれだが、味は悪くねぇ。頑張った甲斐があったじゃんよ」

ちゅ、と口から指が離れると、顔がぐあーっと熱くなる。


「なぁ……これ、全部俺にくれよ。他の奴になんかやるな」


「な……ダメに決まってるだろ!やってもあとひとつだけだ!残り3つは皆に、だし」


「そうかい。んじゃ、こっちを頂くとしよう」


何言ってんだ、なんて思っている刹那、私は顎を引かれ、無理矢理横を向かされたかと思うと、眼前には、皆川会長の眼鏡越しにある、綺麗な黒い目。


口には熱く柔らかいものが宛てがわれ、ハワイの時の経験から、それが唇だということが、分かった。


間近で見つめれながらされるそれが恥ずかしくて、目を瞑ると、唇を、ぬるりと何かが這う。


「なっ……んぐぅ!」


それは私の口内をまさぐり倒し、マフィンの後味を全て吸い付くし、離れていった。


「ん……ふっ。なんだ、その顔可愛いな」


小さく呟いた皆川会長の言葉に、さっきの行為の余韻で熱かった顔が更に温度上昇を遂げる。
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