一番星のキミに恋するほどに切なくて。《旧版》
「えっ…あ……………」
あたしが慌てていると、『悪い』と言って手を離した。
「…おい…家出娘」
「は、はいっ……」
咄嗟に返事をしてしまったけれど、家出娘って…。なんか嫌な響きだなぁ…。ムッとしていると、男の人の笑い声が聞こえた。
「っくく…見てて飽きないな…お前は」
わ、笑われたっ?あたしは頬を膨らませ、男の人を睨む。
なんだか…馬鹿にされてるみたい…。
「…行く当てはあるのか?」
男の人は急に真剣な顔をしてあたしを見つめる。
この短時間に色々ありすぎて忘れてたけど…。あたし、家出中だった…。
『行く当てなんかありません』そういう意味を込めて、ブンブンッと首を横に振った。そんなあたしを、男の人は無言で見つめた。
え?な、何だろう?何か…見られてる?あたしも男の人を見上げているため、必然的に見つめ合う形になってしまう。
「…はぁ……仕方ないか」
長い沈黙の後、男の人は深いため息をついて立ち上がった。それから、あたしを無表情なまま見下ろす。
「……お前、名前は?」
「…………夢…月……」
ぼそりと言うと、男の人は小さく笑った。