一番星のキミに恋するほどに切なくて。《旧版》
「あら、ずっとよ。さて……蓮、もしあなたがあの子の傍にいると決めたなら、早く行ってあげて。きっとあの子……あなたから逃げ出すわよ」
「……逃げ出す…?」
博美は頷いて俺の手を引き、病院から追い出した。
「…夢月ちゃんはきっと…あなたが好きよ。でも…どうしてもあなたに伝える事が出来ない。その選択が、あなたを傷つけるとわかってるから…」
「…どういう…意味だ」
「…あたしに言えるのはここまでよ。ほら、行ってらっしゃい」
博美はいつも正しい。でも…。
今回ばかりは…博美の言っている意味が良くわからない。
それでも…胸騒ぎがする。本当にいなくなってしまうんじゃないか…。
そんな不安が何度も頭の中を過ぎる。
俺は無我夢中でバイクを走らせた。
「………蓮……」
博美は遠ざかっていく蓮の背中をただ見つめる。
「あなたはきっと人生で最も辛い思いをする事になる。それでも…夢月ちゃんを選ぶのね…」
少し寂しげに呟いて、しばらくその場に立ち尽くしていた。