一番星のキミに恋するほどに切なくて。《旧版》
涙が出てきた。それは雨と一緒に流れていく。この雨は…あたしの涙なのかもしれないね。
「…夢…月………?」
しゃがみ込んでいると、後ろから名前を呼ばれた。驚いて顔を上げると―…。
「…喜一…お兄ちゃん…?」
そこには傘をさした喜一お兄ちゃんがいた。目の下にはクマがあって、少し痩せた気がする。
―ガバッ
「…っ……夢月っ!!」
気づいたら抱きしめられていた。傘が弧を描いて空中を舞う。
雨に濡れたあたしの冷たい体が、喜一お兄ちゃんの体温で温まっていく。
「探してたんだぞ?ずっと…夢月を探してたんだぞ…」
今にも泣きそうな声が聞こえる。喜一お兄ちゃんはさらに強く抱きしめてきた。
「…喜一お兄ちゃん……」
それっきり何も言えなかった。あたしに何が言える?
…言える事なんか何もないんだ。
「…帰ろう」
喜一お兄ちゃんがあたしの手を引いた。
でも、あたしはそこに踏み止まる。