一番星のキミに恋するほどに切なくて。《旧版》
「…夢月…どうした?」
喜一お兄ちゃんはあたしを心配そうに見つめている。
あたしは首を横に振った。
「帰らないよ…」
「…な…なんでだ!?」
喜一お兄ちゃんはあたしの肩に手を乗せる。
「帰りたくない理由があるのか?」
『そうじゃない』とまた首を横に振る。
「じゃあなんで………」
「…これ以上…生きたい理由を作りたくないからっ!!」
喜一お兄ちゃんの手を振り払う。
これ以上誰かの傍にいたら……生きていたいと思ってしまう。自分の選んだ道を後悔してしまう。
「…でも夢月!!今からでも遅くない!治療するんだ!そうすれば少しでも生きられる時間が延びるんだぞ?」
「…ベットの中で、チューブに繋がれて…。自分の意思も持たない、自由に行動も出来なくなる…それで生きてるって言える!?」
気づいたらそう叫んでいた。
たとえ余命が延びても、ずっと寝たっきりで…それで本当に生きてるって言える?
あたしはそうは思わない。あたしは…その羽が壊れるまで羽ばたき続けたいの…。
「…あたし…治療はしない!!白血病だって…余命が3ヶ月だって言われたあの瞬間から、あたしの答えは変わらないよ!!」
「…それ…どういう事だ?」
今度はあたしの後ろから声が聞こえた。
喜一お兄ちゃんじゃない…。この声は……。
慌てて振り返ると―…。
「…蓮さ……ん…?」
頭が真っ白になる。ずぶ濡れになった蓮さんがそこに立っていた。