一番星のキミに恋するほどに切なくて。《旧版》
それは数時間前の事ー…。
「あたしは…受けません」
あたしのお母さんとお父さんは、あたしが14才の時に他界した。交通事故のせいだ。
家族で海へ行った帰りに、飲酒運転の車と衝突して命を落とした。幸い、あたしだけ運良く助かった。
「な、何言ってるんだ!!治療を受けなかったら夢月ちゃんは…」
そして、白血病であるあたしに治療を進めているのは杉沢 豊(スギサワ ユタカ)さん、あたしのいとこのお父さんだ。
「…良いんです。もう十分生きました…」
笑顔で言うあたしを見て、豊さんは辛そうな顔をしていた。
本当に、もう十分だ。十分生きた。
それにー…。
いくら仲の良いいとこだとしても、治療費まで払わせられない。ただでさえ、あたしを養ってくれているのに…。
抗がん剤治療をしても、絶対に治る保障も無いし、苦しい思いをしてまで生きる理由も無い。
杉沢家のみんなは、優しい家族だった。お母さんとお父さんが他界した時、あたしを誰が引き取るかで随分と揉めていた。
あげくの果てに、あたしはいろんな家を、たらい回しにされた。そんなあたしを、心良く引き取ってくれたのは、杉沢家だった。