君を忘れない
周りには民家がなく、駐車場にも車はない。

つまり、ある程度の声で歌ってもそんなに迷惑がかからないのだ。

僕とハマは静かで人気が全くなく、それでいて広い、この場所がかなりのお気に入りだった。

一体、何度この場所で歌っただろうか。

寒い冬のときでも来ていて、確実に月に一度は来ていた。

あまりにも何度も来ていたから正確な数など分からないが、最初の頃なんて週に一度は必ず来ていて、三日連続でなんてこともあった。

そして、そのたびに僕らは携帯から流れる着うたに合わせて歌っていた。



そう



ここが僕たちにとっては最高のステージだったのだ。



ステージといっても自分たち以外に人はいない。

それでも、いや、それだからこそなのかもしれないがかなりノリノリだった。

たまに駐車場の手前に車が来て、スーパーで買い物をする人が車から降りるのが見えて恥ずかしくなったりした。



ハマは本当に歌が上手くて、一緒に歌っているこっちが惚れ惚れする。

こんなやつと、なんで下手な自分が一緒に歌っているんだろうと何度も思ったことがある。

だけど、ハマと歌う時間はあっという間に過ぎてしまうくらい楽しくて、僕にとってはかけがえのない時間だった。
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