君を忘れない
あれから、もう三ヶ月が経った。

予定では来月が電車ライブで、今頃はライブで歌う曲を決まっていてここで練習していたのかな。

いや。

練習というよりは、きっといつもと変わらず好きな曲を好きなように歌っているだけだろうな。

けど、今はそれすらできない。

いくら歌っても、僕のとなりにハマはいないのだ。



ハマ・・・



お前から言い出しておいて、これはあんまりだよ。


「来てたのか」


声の聞こえた方向を向くと、外灯から少し離れていたところから店長が歩いてきた。



店長もハマの病気のことは知っていて、知ったときは見ているこちらが辛くなりそうなくらい悲しい顔をしていた。



店長が僕の隣に座ってきて、大きく息を吸いながら空を見上げた。

それにつられて空を見ると、今まで気づかなかったが綺麗な星空が広がっていた。

星空を眺めるだけで店長は何も話さないし、何も聞いてこなかった。


「店長・・・」


その沈黙にしびれを切らしたわけではない。

何も話してきてこない店長の心遣いが涙が出そうなくらい嬉しく、その嬉しさが誰にも話せない今の僕の辛さ、悩みを吐き出させてくれる。


「俺、どうしたらいいか分からないよ」


人はどうして悲しいときや辛いときに下を向いてしまうのだろう。

そう思っていても、ついつい下を向いてしまった。
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