君を忘れない
下をちらりと見ると、小山が不機嫌そうな顔でこっちを見ている。

小山だけではない。

今日に限って厄介なOBが来ているのだが、そのOBもやはり僕が係の説明をしているのを見て不機嫌そうな顔をしている。

係の説明は現在サークルを運営している3年生の仕事であって、4年が説明しに行くことは本来ないのだから。


「会長はサークルをまとめ、女子会長は女子をまとめ、副会長はというと、強いて言うなら同じ学年をまとめるってことかな」


「いや、立派じゃん。

そこ押していこうよ」


「自分も副会長だったからって、立派とか言って」


「ああ、この絡みがうざいわ。

もう、面倒くさいから良いことだけ言って」


「運営だからといって、無理して来なくていいから。

その代わりに来たときは思いっきり楽しんで、周りを巻き込んで笑わせて下さい。

それじゃ!」


そう言って、2年生の前から立ち去る。

小山の表情が頭に浮かび、また口喧嘩になってしまうのかと思うと、少しだけ憂鬱になってきた。



二人で階段を降りると、それと同時に階段のほうに小山が走ってくる。


「なんで、トラさんが説明に行ってるんですか!」


かなり強い口調で問いかけてきた。


「いや、マスコット的な意味合いで」


「はぁ?」


やはり、今のこいつには通じなかった。


「俺が一緒に説明するのに来てくれって言ったんだよ」


四盛がそう言うと、小山が聞こえるような(実際、聞こえていたが)、舌打ちをして体育館に戻っていく。


「別に一人でもできるだろう。

そんなこと4年生に頼むなよ」


四盛のフォローのおかげでこれだけで済んだ。

僕と小山だけだったら、あと1時間は言い合いをしたうえで何も解決しなかっただろう。

こいつと女子会長のかよっぺは、僕と小山の間を入らせたら天下一品だ。

まぁ、去年までその必要もなかったのだが・・・
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