君を忘れない
「あのときは本当に面白かったな」


懐かしそうにヒメが言う。

その表情どおりに俺も懐かしく思う。



懐かしい・・・

ヒメとの思い出は歌うことも含めて、こういう馬鹿なことが多いな。

けど、馬鹿なことができる友達って、なかなかいるものじゃない。

本当にあいつと出会ってよかった。

できることなら、大学生活一番の馬鹿をやりたかった。

電車で歌って、はしゃいで、歌の合間にはフリートークやって、たくさんの人を笑わせて・・・



頭の中に光景が浮かんでくるようだ。

みんな笑っている。

大勢の人が笑っているよ。

そんな中でやりたかった。



けど、もうできないんだな・・・

せめて、せめて発病が半年遅れてくれたらできただろう。

いや、電車ライブの計画をもっと早くに思いつき打ち明けていたらできただろう。

こんなことを考えたら切りがないのは分かっているのだが、この病室に来てから一体どれくらい考えただろう。

何度考えても結局はもどかしく、辛い感情だけが後味悪く残ってしまうのだ・・・
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