君を忘れない
ファンファーレが鳴り響き、六艇が一斉にピットから離れコース取り・待機行動に入る。



緩やかな風とともにスタートし、競艇の一番の見所の一周一マークの攻防。


『四号艇がまくりにいく!

しかし、一号艇がそれを受け止める。

二号艇・三号艇は差せない。

バックストレッチ、先頭は一号艇、これがシリーズリーダーの実力!』


六艇が一マークに殺到し、水煙の中から一コース・一号艇の選手がスッと出てきた。

今まで何度も見てきた光景だが、何かが違う。

今までとは違う衝撃が、僕の背中を走り抜けた。

感動という単純な言葉では表せない何かが・・・


「すごい・・・」


それからは先頭の一号艇の選手だけを三周ずっと見つめていた。


『最終ターンマークを先頭で一号艇が回ります。

とにかく今は行動あるのみ。

今節、その行動が優勝という最高の形になります。

一着一番ゴールイン!』


実況が耳から体の隅々まで入ってくる。

一般戦の優勝だというのに派手にガッツポーズをしている。

A1の選手だ。

初優勝というわけではないだろう・・・



優勝戦のあとは、いつも優勝者インタビューがあるのを思い出し、思わず走り出していた。


今の選手を見たい


何がこんなに僕の気持ちを高ぶらせているのか分からない。

しかし、更に速く走り出していた。

もう、全力疾走に近いくらいに・・・
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