君を忘れない
「それでは、優勝した柳神龍馬(やながみりょうま)選手の登場です!」


ゴールしてからすぐに走ったおかげで、前から二番目の列に座れた。

最前列の人たちはインタビュー目当てでレースが始まる前から座っていたらしいので、実質一番前に座れたと言ってもいいだろう。


「引き続き、インタビューに移りたいと思います」


表彰が終わり、ついに優勝者インタビューが始まった。

着ているシャツが濡れているところが、さっきまで水面でレースをしていて、優勝戦を一着でゴールしてきたのだと改めて知る。


「今節は何かいつもよりも強い気持ちを持って臨まれたそうですね?」


「そうですね。

この前、同期が転覆で大怪我してしまって、それからずっと引退しようか悩んでいるらしくて・・・」


「今節はその同期の選手を勇気づけるために優勝するつもりで?」


「はい。

僕なんかが言葉でどうこう言っても説得力無いですし、いい言葉を言えるわけでもないので。

それならば、行動で示そうと」


「その行動が、結果、優勝です」


「人を勇気づけるための行動というのは、こちらもかなり勇気がいります。

だけど、勇気を出している行動だからこそ、人を勇気づけられると思います。

同期みんなそのことを胸に行動・レースをしています。

みんな頑張っているなかで、今節の僕は結果的に優勝という最高の形になって良かったです」


言葉じゃなくて行動・・・

どんな形でもいい。

あいつを勇気づけてやれる行動。

勇気を出している行動だからこそ、人を勇気づけられる・・・
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