君を忘れない
「それでは、最後に一言お願いします」


「転覆した同期が以前に僕を目標にしていると言ってくれたことがありました。

目標にされている以上は、その目標が恥ずかしくならないようにこれからも一生懸命頑張りたいと思います」


「ありがとうございました!」


優勝者インタビューが終わり、大勢の人が出口へと向かっていく。



今の言葉があまりにも自分の胸の中に勢いよく入り込んできたために、圧倒されたかのように僕はその場から動くことができなかった。

もう一度、頭の中で先ほどの優勝戦のレースを振り返り、柳神選手のインタビューの言葉を思い出す。

その言葉にため息が出たところで警備員に肩をたたかれ、ようやく出口へと足を進めることができた。



原付に乗り、行くときは府中街道を通ってきたが、多摩川の堤防沿いを走る道を選んだ。

こちらのほうが交通量は比較的少なくて、歩行者が少ないからだ。




原付で走りながら、またも優勝戦を振り返る。

今日の優勝戦は今までで一番感動したレースだった。

そして、優勝者インタビュー・・・・・

強い思いを持って臨んでいる人というのは、やはり見ている者に何かを与えるのだろう。
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