君を忘れない
「えっ?」


その言葉に驚いた。

半ば放心状態のまま小山を見ると、子供のように照れ笑いを浮かべながら頭を掻いていた。

この時期にOBの人と改まって話してきたということはもしかして・・・


「毎週ある飲み会を二週間に一回にして下さい、って」


やっぱり、そうだ。

そんな素振りなど、一切見せていなかったから分からなかった。

僕が二年生と話して、九月くらいに話そうと思っていたのだが、まさか小山が話しに行くなんて思ってもみなかった。


「なかなか、分かってくれなくて大変でしたよ。

けど・・・」


「けど?」


小山がゆっくりとこちらに指を差す。


「トラさんが体壊したことを話したら、渋々でしたけど分かってくれました」


「じゃあ・・・」


「二年生が運営するときは、飲み会は二週間に一回になります」


大した奴だ。

そのことをOBに話したらどういう思いをするか分かっていながら、自ら頼みに行くなんて。

ましてや、僕がどういう仕打ちを受けたかを知っていながら・・・


「トラさんが体壊したの無駄にしたくなかったですから」


「なんか、もうちょっと言い方変えたほうがよくない?」


「えっ?

そうか。

これだど、トラさんが体壊してくれたおかげみたいな言い方になっているか」


そんなことどうだっていい。

こいつらは本当に勇気ある行動をしてくれた。

僕の目の前に最高のお手本がいたじゃないか。


「お前ら最高だよ」


今度は僕が行動をする番だ。
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