君を忘れない
心ではそう思っていても、実際にこういうときに何て声を掛けていいのか分からない。

ヒメたちはいつも俺の見舞いに来ては他愛もない話をしていたが、かなり気を遣ってくれていたのが今になって知った。


「体、そんなに悪いんですか?」


なんて唐突な質問をしてしまったのだろう。

これだけ話してくれた相手にこの質問を投げかけるなんて、今の話でただの風邪だなんてことあるわけがない。


「俺の体だ、俺が一番分かる。

もう体中が悲鳴をあげている。

いや、もう悲鳴すらあげられなくなっている」


またしても返す言葉が見つからず、ただ病室の床に視線を落とす。


「そう・・・

ですか」


確かに自分の体は自分が一番よく分かっていることを、今の俺も身を持って知らされている。

体が徐々に蝕まれているという感覚、それが徐々に体全体に広がるような感覚は実際になってみなければ分かるはずがない。

俺だって、こんなことになってから初めてこんな恐怖と出会った。

いや、出会ってしまったのだ。

おっちゃん・・・

あんたの気持ち、すげぇよく分かるぜ。
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