君を忘れない
「そうだよな。

自分の体は自分が一番分かるもんな」


どれくらい沈黙の時間が流れただろう。

いや、もしかしたら大した時間じゃないのかもしれないが、俺にとってはとてつもなく長い時間に感じた。



体と顔をおっちゃんに向ける。

おっちゃんもこちらを向いてきた。


「おっちゃん。

あんた、死ぬよ」


おっちゃんは驚いた顔をしたが、すぐにまたどこか遠くを見るような顔つきになった。


「家族でもない、兄ちゃんに言われてもな・・・」


「確かに、俺はおっちゃんの家族じゃない。

血なんて繋がってないから、身内でもなんでもないのかもしれない」


家族でもない俺にこんなことを言われたら、普通は腹立たしいはずなのにため息の一つで終わってしまう。

それくらい、おっちゃんは本当のことを言われないことを苦しんでいる。


「身内にはなれないかもしれない。

いや、なれない。

けど、親友にはなってもいいだろ?」


おっちゃんがまた驚いたような顔になる。


「親友の俺が言ってやるさ。

あんたはもう長くない」


こんなことを俺が言ってもいいのだろうか。

言い終わってから、そのことが心配になってきた。
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