君を忘れない
明日書こう


便箋を引き出しから取り出してから三十分経っても、何も書き出せない自分に嫌気がさして照明を消した。

書きたいことが頭から溢れ出てくるのだが、それを改まって文章にしようとするが手が言うことを聞いてくれず、便箋には何も書き出されなかった。



頭の下で手を組み、目を閉じてこれまでの大学生活を振り返ると、様々な思い出が次々と甦ってくる。

入学してから、本当に楽しかった。

ヒメとの出会いはサークルの先輩と喧嘩した次の日、顔に青あざつけて挨拶したらあいつの顔が少し引きつっていたっけ。

それから・・・



だどれも、ついさっきあった出来事のように鮮明に頭の中に甦る。

大学生活を思い出しているつもりが、ヒメとの出会いからはずっとあいつが出てきていることに気付いた。

ベッドで一人、そのことに対してクスクスと笑ってしまう。


(ちくしょう)

俺はもう死ぬというこんな状況で、あいつのことを思い出すと笑っちまうじゃねえか。



もう一度照明をつける。

今度は自然とペンが走り出していた。
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