君を忘れない
これが、あいつとの最後だなんて嫌だ。



今までずっと笑い合っていた最高の友達ともいえる、あいつとの別れがこんな形だなんて嫌だ。



あいつとの最後の思い出が涙なんて嫌だ・・・



何も言葉が出てこない。

少しでも口を開いてしまえば、堪えているものが溢れ出てきそうだ。

些細な意地のようなものだ。

せめて、あいつとの最後の思い出は涙でありたくはない・・・

あいつが入院してから今まで何をしてあげればいいのかなんて分からなかったけど、最後だけは笑おうと決めていた。

それなのに、こんなの笑うことなんてできるわけないじゃないか。


「実は、にいちゃんからこれを預かっているんだ」


おっちゃんはそう言いながら引き出しの中から封筒を取り出して、僕に手渡してきた。


<我が親友・虎姫夏輝へ>


封筒の表には、そう書かれていた。

いつもとは違う達筆な字だ。

普段は汚くはないもののこんな達筆に字を書かないので驚いた。

それだけに何か大事なことが書かれているということは容易に分かった。

ただの封筒のはずなのに、手に持った瞬間にまるでとてつもなく重いものを持ったような感覚で、どうすることもできなかった。
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