君を忘れない
本当に・・・



本当に馬鹿な奴だ。



人がどれだけ躊躇ってこの手紙を開いたと思っている。

人がどんな気持ちでこの手紙を読み始めたと思っている。

お前はもうすぐ死ぬんだぞ、自分でも手紙にそう書いているというのにこの『(笑)』の多さは。

どこまで、馬鹿をやれば気が済むんだ。



そして、どこまで勝手な奴だ。

泣きたくないから手紙にしたって、それだけで最後の挨拶もできなかったのか。

泣いたっていいじゃないか。

これじゃ、手紙を読んでいる僕は泣いちゃ駄目みたいじゃないか・・・


「馬鹿・・・やろう」


歯を思い切り食いしばる。



泣いちゃ駄目だ・・・



誰かに言われたわけではないけど「今ここで泣いてはいけないのだ」、そう、自分自身に言い聞かせた。



左肩をそっとかよっぺが叩いてきた。


「友達のことを思って泣くのって、恥ずかしくもないし、当たり前だと思うよ」


頬に冷たいものが滴っていくのが分かる。

堪えているものが溢れ出そうとしている。


「お互いに本音を言い合えたから、最高の親友だったんでしょ?

だったら、胸にある思いや涙は締まっちゃままじゃ駄目だよ」


その言葉に堪えているものが、堰を切ったかのように溢れ出てきた。

ただ、ただ、頬を伝っては床に落ちていく涙。

そうしていくうちに体の力が抜け、膝を床につける。

それでも、これでもかというくらい涙は溢れ出てくる。
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