君を忘れない
「そういや、ねえちゃんも笑っていたぞ」


笑っていると、おっちゃんが照れ笑いをしながら言った。


「おっちゃんも笑ってたんだろ?」


その照れ笑いはそうに違いない。


ありがとう


やっぱり、ヒメは親友であり、俺の一番の理解者だ。

これからも、きっと俺を思い出すときは笑ってくれるだろう。



「しかし、『病室変わっただけで上にいるぞ』って、言いたくて言いたくてしょうがなかったぞ」


ヒメへの手紙が書き終わり、俺はすぐに先生に病室の変更を申し出た。

もうすぐ地元に帰るから最後のお願いだと言えばいいだろうと思っていたが、そんなに簡単にはいくはずもなかった。

しかし、俺と一緒におっちゃんもお願いしてくれて、一時間粘ったところでようやく変更の許しが出たのだった。


「おっちゃんには迷惑かけたな」


「俺たちは身寄りだろ。

これくらい迷惑のうちに入りやしないよ」


満面の笑みでこちらを見てくる。



全く・・・



この前、俺が言ったことをすぐに使いやがって・・・


「あの時の俺は人生最大の演技だったな。

かなりの役者ぶりだったぜ。

もうすぐ死ぬというのに、これだけ大笑いできるのもにいちゃん達のおかげだ、ありがとよ」


俺だって、もうすぐ死ぬ。

そんな二人がここで大笑いしているなんて、周りからしてみればどんな風に見えるだろう。

おかしい光景?

前向きな光景?

なんでもいい。

こうやって、大笑いしているのだから、どんな光景に見られても俺たちは今を大笑いしているのだから、だから・・・



これでいいんだ。
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