君を忘れない
「4年生が何で係の説明するかな?

よりによって、今日は厄介なOBが来てるのくらい分かってただろうに。

あの人、今頃は絶対飲みながらキレてるよ」


かよっぺが買ってきてくれたビールを開けたが、酒を飲みながらだと質の悪い愚痴に思われるかと思い、飲まずに置いたままにしておく。

以前に酒を少し飲みながらトラさんの話をしたとき、悪酔いしてるからとろくに聞いてもらえなかったことがあったからだ。


「また、そうやってトラさんのやることを悪く言う。

あの人だって、自分なりにみんなを楽しませようとしてるんだから」


それは分かっているつもりだ。

だけど、それを認めてしまったら俺が先輩たちに何て言われるか分からない。

あの人だって現役生の前じゃあんな感じでいるけど、OBの前じゃ何もできないさ。

できるものなら、あのときにやってくれていたはずだから。


「去年は私たちが説明聞いたんだよね。

あれから1年か・・・」


「どうしたの急に」


「いや、別に」


話しているかよっぺの顔つきは、「別に」というような顔ではない。

何か深く考えているような顔だ。


「1年って早いけど、大きいね。

トラさんと真一見ているとそう思うよ」


いきなり何を言い出すのだろう。

俺とあの人のことなんかどうでもいいじゃないか。
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