君を忘れない
「まさか・・・

中身は確認したの?」


「してないよ」


信じられないというような表情になった。



今、かよっぺに渡したカードには、さっきまで僕が今日歌う予定だった歌が十二曲入っている。

自分が一番好きな歌、ハマが誉めてくれた歌、思い入れのある歌、それらを昨日まで考えに考えて選んだ十二曲だ。


「着うたが入ってなかったらどうするの?

もし、入ってたとしてもトラさんが歌うような歌じゃないかもしれないじゃない?」


「いや、入っているよ。

絶対に・・・

入っているよ」


かよっぺはいつもわが身のことのように友達を心配するが、今まさにそういう状況なのだろう。



けど、心配するかよっぺには悪いが、このカードの中身だけは確認しなくても分かる。

あいつと出会って二年半、一体どれだけの時間、どれだけの曲を歌ってきたか分からない。

きっと、数字にしたら途方もない数字に近くなると僕は思っている。

それだけ二人で歌ってきた、それだけ二人は一緒に時間を過ごしてきた、それだけ二人は馬鹿をやってきた、それだけ・・・



このカードには、絶対に僕が今日歌うべき歌をハマは入れいている。

それが僕とハマの二年半の証であり、二人で歌ってきた、なによりの絆なのだから。
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