君を忘れない
「私の夢・・・

夢というほど大層なものじゃないので、挑戦したいことですかね。

それを話して一ヵ月後に別れましたから、私との付き合いに愛想をつかしたのかどうかはっきりしていないです。

本当にそこまで考えていたのかどうか」


ここまで話をして、思わずため息をつく。

本当にこんなことまで話してしまった。


「大変だったな。

いや、大変なんだな。

でも、それははっきりと分からなくてもいいんじゃないのかな。

これから、あいつのこと諦めずにもう一度付き合おうとするにしても、友達に戻るにしろ、一度好きになった人を嫌いにならないでくれ」


ただ、人に話すだけだったら何もなくあのことを思い出すだけだっただろうけど、この人は違う。

私は今までなぜ別れてしまったのだろうとばかり考えていて、その度にあいつを許せないような思いだけがこみ上げてきた。

けど、そんなことなど関係なくあいつを嫌いにならなければ、何も考える必要などない。



この人に話せてよかった。

今のこの気持ちは話す前と違って軽くなったような、上手く言い表せないが確実に悪い気持ちにはなっていない。


「嫌いにはなりませんよ。

同じサークルで、同じ学年にいるんですから少なくとも友達のままではいると思いますよ」


さっきまでの笑顔とは違い嬉しそうに大きく笑っていて、この表情を見るとどこか落ち着く。

私の話をしたら弥栄のことを聞こうと思ったのだが、目の前にある笑顔を消したくないので止めておくことにした。
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