君を忘れない

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多摩線沿いのいつもの道を通って、永山から生田へと原付で帰る。

少しのつもりが一時間近く話してしまい、時間は十一時を過ぎてしまった。


「まあ、鍵は渡してあるから平気だよな」


赤信号に止まり、上を見上げると綺麗な月が見える。

九月になり、夜に原付を走らせるときは半袖では肌寒く感じるようになってきた。

この道は車通りも少なく静かで走っていて気持ちがいい。

悩んだりしたときなどよく通っていたが、そのうちにいつの間にかこの道が好きになっていた。

今では悩みがなくても、この道を通ることが多い。



十分くらいで津久井道に出て世田谷方面へと走る。


(二人はこれからもサークルに来るかな)


二人とも僕は仲がいいので、別れたというのは複雑な気持ちだ。

気まずくなってサークルに来れなくならなければいいのだが、しばらくはなかなか来れないだろうな。

実際に合宿で運営を終えてからの二人は、美波が今日来ただけであとは一度も来ていないのだ。



正直のところ、僕もあのときはサークルには行きたくないという気持ちだった。

けれども、四盛やかよっぺのおかげでまたサークルに行けるようになった。

その恩返しの代わりではないけれど、今度は僕がそういったことをしてあげたい。



アパートにあと五分くらいで着くというところで、電車ライブでもアンコール前に歌った曲が頭の中に浮かんだので口ずさむ。

僕のなかでは秋といえばこの曲で、最近はよく口ずさむのだが、美波のことを思い口ずさむのを止めた。



いや、もしかしたら自分自身のことを思って止めたのかもしれない。

それを美波のせいにして、自分は楽になろうとしていたのかもしれない・・・


「さすがに悪い方向に考えすぎたな」
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