君を忘れない
「トラさん、明日は予定空いていますか」


そう言うと、トラさんは少し驚いた表情をした。

彼氏のいない女の子からこんなことを言われれば、当然といえば当然なのだろうが、最近の若い世代ではそこまで驚かないことのほうが多かったので、そこがまたトラさんらしさなのだろう。


「トレーニングは夜にすればいいから、日中は空いているよ」


ベンチに座り夜空を見上げながら答えてくれた。


「じゃあ、私を競艇場に連れて行ってください」


今日のトラさんと会って、真剣に向き合っている夢を私の目で一度見てみたくなった。

この人の夢にさせた競艇というものを。


「別にいいけど、どこかやっているかな」


トラさんが携帯で調べている間、私は競艇がどういったものか頭の中で考えていた。

どういったところで競争するのか、舟はどういった形をしているのかも、競艇の何もかもが本当に知らなくて、膨大な量の未知の情報が頭の中に流れてきて溺れそうになった。
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