君を忘れない

-２-

「何で飲まないの？

合宿終わったらお前らがサークルを運営していくんだよ。

今のままでいいと思ってるの？」


いつも使っている飲み屋のトイレの外で小山(おやま)の声がする。

我がバドミントンサークルの20代会長だ。

相変わらず堅いことを言っているな・・・・・


「まぁまぁ、小山。

別にいいじゃん」


「トラさん、何言ってるんですか。

もうすぐ運営する側になるんですよ。

それなのにこいつ酒飲まないし潰れないんですよ。

こんなの先輩たち見たら怒るに決まってるじゃないですか。

だから、今のうちに注意しとかないと駄目なんです」




いや、もうすでにお前が怒っているよ


この言葉が喉を通って口から出そうになったが、なんとか堪えた。

きっと、口から出ていたら、また僕たちの口喧嘩が始まってしまう。


「いや、もうすでにお前が怒っているよ」


出てしまった。


「だいたい、あんたが下の学年に飲み会来なくていいとか、無理して酒飲まなくていいとか、そんなことばかり言ってるからこういう奴らが出てくるんですよ。

飲み会終わったあとに潰れないで平気でいる人数が多いとこっちが先輩たちに怒られるって、あんただって分かってるでしょう」


「けど、運営が潰れてばかりでも怒られるだろ」


また、余計なことを言ってしまった。

言ってもいいのだが、どうしてこうも喧嘩がエスカレートするような言い方になってしまうのだろう。


「じゃあ、どうすればいいんですか？

どうせ、あんたは先輩の顔色気にして何もしてくれないでしょう」


そう言うと、小山は飲み会に戻っていった。

胸にグサリとくる一言だ。

確かに僕は何もできなかった。
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