君を忘れない
かよっぺの声が部屋に大きく響いた。

こんな大声をかよっぺが出すのは初めてではないだろうか。


「あっ・・・

ごめん」


「いや、俺のほうこそ言い過ぎた」


本当に言い過ぎてしまった。

あの人だけならまだしも、弥栄のことまでだしてしまった。

弥栄はかよっぺの親友だ。

死んでしまった親友の話を自らしたくないだろうし、されたくもないだろう。

いくら腹がたっていたとはいえ、俺は最低なことを言ってしまった。


「弥栄のことは私より、いや、サークルの誰よりも重く背負っているんだから、そんなに責めないであげて」


下を向きながら、そう言うかよっぺの目にはうっすらと涙が溜まっている。

その涙は弥栄に対してなのか、トラさんに対してなのか、もしくは二人に対してなのかは今の俺には分からない。


「本当にごめん」


「ううん、いいの。

真一の気持ちも分からなくはないから。

でも、これだけは分かってほしいの」


「何?」


「トラさんと一度、お互い本音で話してみて。

そうすれば、分からなかったこともきっと分かると思うから」


分からなかったことが分かる。



一体、何が分かるというのだ。

こっちはトラさんに言いたいことは言っている。

飲み会に無理して来なくていいと言わないでくれとか、常に本音で話している。

あっちだって、俺たちに本音を見せたじゃないか。

裏切りという本音を。
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