君を忘れない
布団を奪ったかよっぺの背中を軽く小突いた。

去年までだったら、もう一組の布団に四盛がくるまっていて、うちにある布団を全て奪われていた。

そして、あの人は起きていて、下の自動販売機から缶ジュースを2本買ってきていて


「こいつら、人のアパートなのに図々しいな」


と言いながら、缶ジュースを俺に投げてきて


「少し話すか」


と、俺に笑顔を向ける。

それから30分、長いときは1時間以上はくだらない話などをした・・・



俺はあのときのあなたが本当に好きだったし、尊敬だってしていた。


「トラさん・・・」


さっきまでは怒りの感情だったが、今は悲しみの感情で胸の中いっぱいで、涙が出そうになった。



今、初めて気づいた。

俺はあの人に裏切られて、怒りよりもなによりも悲しかったのだ。

ずっと、ずっとあなたと一緒にこのサークルで楽しんでいけると思った。



それなのに、あのとき何故何もしてくれなかったんですか?

あなたを信用していた俺は馬鹿だったんですか?

あなたは何故変わってしまったんですか?



この気持ちをあの人に伝えたら、何か変わるだろうか。

いや、変わるのではなく戻りたいのだ。

また、去年までの二人に戻れるだろうか。
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