君を忘れない
「トラさん、すみません。

飲まないの小山さんにばれちゃいました」


怒られていたのもお構いなしに屈託のない笑顔で僕に謝ってきた。

全く反省などしてない顔だ。


「潰れるのが正しいみたいな言い方するから嫌なっちゃいますよね。

でも、潰れるだけが飲み会じゃないし、コール以外にも楽しみかたがあるってのを俺ら『向こう側』がやってきましょう」




『向こう側』


以前、うちのサークルの中心となっているOBが『こっち側』発言したことに反発してできたのが『向こう側』だ。



『こっち側』とは、上手く言えないが飲み会では大抵の先輩が好きなコールをがんがん他人に振って潰し合いをする。

飲み会以外でも常に自分たちは正しいのだと本気で思っている奴らの集まりだ。

ちなみに、この集まりのOBに嫌われるとサークルではかなり冷たくされ、いづらくなってしまう。



それに対して『向こう側』とは、『こっち側』の逆だ。

いや、逆というよりは『こっち側』に好かれなかった奴や、バドミントンは好きだけど飲み会が苦手という奴、『こっち側』の考え方が好かないできた奴もいる。



と言ってもあからさまに対立はしておらず、何も知らない新入生などが入ってきたら表面ではみんな仲のいいサークルに見えるだろう。

しかし、勘が鋭い新入生には分かってしまうだろうが。


(同じサークルなのに、2つの宗派があるみたいで何かと面倒の多いサークルだ)


けど、飲み会を見れば多くの人が笑顔でいる。

だからこそ、4年になってもサークルに来るのだろう。

ただ、人それぞれの考え方が違うだけなのだ。


どうせ、あんたは先輩の顔色気にして何もしてくれないでしょう


まずい。

今日は残り一日中この言葉が頭の中に残りそうだ。
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