君を忘れない
駅に電車が到着し、ドアが開く音が聞こえる。

駅の前に建っている居酒屋やファミレスのネオンがやたら光り輝いているように見え、その明かりの下に俺たちは立っていた。



一体、どうしたというのだろう。

予想していた反応とは違い、トラさんはさっきから黙ってしまい下を向いている。


「いや、飲み会は今まで通り毎週やったほうがいいと思うよ」


「えっ?」


またしても予想していた反応とは違った。



そんな・・・

だって、もともとはあなたがこの考えを俺に話してくれたんじゃないか。

俺はこの考えがいいと思って、自分が運営するようになって会長として実践をしようしているのに、その言葉は一体どういう意味なんだ。


「あんまり、先輩たちに睨まれないほうがいいからさ。

とりあえず、最初はおとなしくして、徐々に変えていけば?」


光り輝いていたネオンが色を無くし、頭の中が真っ白になっていく。

それだけではなく、周りの音が何も耳に入ってこない。



本当にトラさんなのか?

今、俺の目の前にいるのは本物の虎姫夏輝なのか?


お前たちの好きなようにやっていいよ


やりたいことがあったら何でも協力するから言えよ


一緒にOBと話をしてやるからな


先月まではあんなに俺たちに協力するようなことを言ってくれていた人、その人がたった今目の前で発した言葉が胸の奥にまで突き刺さる。


(今までと全く違うじゃないか)


悪い夢を見ているのか。

冗談ならば相当質の悪い冗談だが、それでもいい。

冗談であってくれ。
< 30 / 203 >

この作品をシェア

pagetop