君を忘れない
耳障りな目覚ましの音が遠くで鳴り響いている。

確か、8時に鳴るように昨日のうちにセットしていたはずなのだが、時計を見ると8時30分になっていた。

どうやら、何度も鳴っているうちに無意識に投げてしまったのだろう。

急いで準備して行かないと一限は遅刻だ。



また、あの日の夢を見た。

最近はこの夢ばかりだ。

当たり前だが、あんなことを夢に見ると目覚めが良くなるわけがないから見たくないのだが、こればかりはどうしようもない。



あの時、なんであの人は否定せずにそのまま帰ってしまったんだ。

本当にそのほうがいいと思ったのか。

しかし、それは最悪の結果になってしまっているということは二人の今の関係を見れば分かるだろうし、あの人ならそんなことは予想できたのではないかと今更ながら思う。

あの日まであんなに俺たちにサークルについての色々な考えを話してくれ、俺たちに好きなように楽しめと言ってくれた人が、本当にあれでいいと思ったのだろうか。

それとも、あの日から変わってしまったのだろうか。

だとしたら、なんでそんなに変わってしまった。

何があんたをそんなに変えてしまったんだ。



いけない。

もう、あの人のことなんかどうでもいいはずなのに、そんなことを考えていたら朝から興奮してしまい、一限の遅刻が確実になってしまった。



窓を開けると、眩しい日差しそのままに暑かった。

いつも、誕生日が近いこの時期は梅雨でジメジメしているのだが、今年はカラッとした暑い日が続いている。

この暑さで今から急いで準備をして、たくさんの学生で混んでいるあの坂道を走って上がることを考える・・・

はっきり言うと憂鬱としか言いようがなく、全く気分が乗らない。


(今日は一限サボって昼からのサークルに行こう)


そう思い、もう一度布団を被ってもう少しだけ寝ることにした。
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