君を忘れない

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山手線の一番後ろの車両に飛び乗り、窓に寄りかかる。

一本乗り過ごしてもすぐに次の電車が来るのに、ついつい走ってしまうのは田舎育ちだからなのだろうか。

6月も梅雨というのに、よく晴れて日差しが強く暑いということもあり、少し走っただけで背中は汗が流れ落ちている。


(どうせ、これから動いて汗かくから別にいいよな)


電車の中は冷房が効いていて涼しく、しばらく乗り続けて涼んでいたいのだが、新宿から2駅から離れていないため5分くらいで降りなければいけない。



満員の電車を降り、体育館に近い改札を出たところでかよっぺを見つけた。


「あれ?

トラさん、試験あるのにもうサークル来ていいの?」


こちらから声を掛ける前に向こうも気づき、笑顔でわざとらしく聞いてきた。

結果を知っているうえに、先週も同じようなことを聞いてきたのに・・・


「別に落ちたからいいんだよ」


先月受けた競艇学校の試験の結果が出て、一次試験すら通れずにまた落ちてしまった。

4回目の受験だったのだが、今回も駄目だった。


「まあ、落ちたものはしょうがないよ。

元気出して」


人から励まされると余計に悲しくなってしまうのは僕だけだろうか。

ちょっと涙が出そうになってきた・・・

さすがにこれは大げさだったかな。
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