君を忘れない
体育館に着くと背中は汗でかなり濡れていた。

そのせいか、冷房が強くかかっている一階のロビーでは少し肌寒く思わず両肩を上げてしまった。



券売機で利用券を買い、階段の前にいる係の人に見せ三階へと行く。


「わあ、競艇選手だ」


わざとらしく四盛がこちらに向かって叫んでくる。

かよっぺと一緒で、こちらも先週も同じことをやってきた。


「もう、いいっつうの」


全く、普通だったら試験に落ちたら気を使うのにこいつらは。

まっ、こいつらに気を使われるのは嫌だし、そういう仲だということにしておこう。



ロッカーで着替えて、うちのサークルの場所へと移動する。

火曜は昼間からの練習で、授業がある人もいて木曜に比べるとかなり少ない。

それに加えて、まだ始まったばかりとあって6人しか来ていなかった。


(いつも通りだな)


四盛と基礎打ちをしながらそう思っていると、ロッカーから火曜には珍しい奴が来た。


「トラさん、今一瞬ですけど顔引きつりましたよ」


四盛がいやらしい笑顔でこちらを見てくる。

小山は火曜の午後は授業があるから、いつも授業に出ていて火曜の練習に来るのはかなり珍しい。


「うるせっ!」


そう言いながら、基礎打ちをする小山を横目で見る。

あいつは規定のランクではBになる。

僕はCだが、大学からバドミントンを始めたからもともとはもっと下のランクだったので、バドミントンの実力は小山のほうが圧倒的に上だろう。

だろう・・・と言ったのは、去年から1年間全く試合をしていないから今は実力の差がどうなっているか分からないのだ。

久しぶりに試合をしてみたいとは思うものの、結局はやらずに練習が終わってしまうということを1年間繰り返してきた。
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