君を忘れない
ところが、この1年間は一体何だったのだろうと思うくらいにその機会は意外にもあっさりとやってきた。

人数が少ない火曜のうえに、いつもよりも更に少ないとなれば試合をすることになっても当然といえば当然なのだろう。


「みんなBで、俺一人だけCって気まずいよ」


「いや、トラさんは十分Bでもやれますから」


1年生のBランクの子が笑顔で言ってくれた。

大学に入学したばかりだというのに、お世辞のできるしっかりした後輩だ。



思わぬ形だが、久しぶりに訪れた小山との試合。

コートに目をやると、別に誰でもいいから早く試合しようというような雰囲気の小山がこちらを見ていた。

お前はどう思っているかどうか分からないけど、僕はお前との試合は凄く楽しくて面白かった。

だから、あれから一緒に試合をしなくなって本当に残念だった。

誘ってきたのが僕と小山の関係を知らない1年生ということもあってこの機会が訪れたというのなら、今は無邪気でお世辞のできるこの子に僕は感謝しなければいけない。



体育館の時計を見ると4時ちょうどを指しているので、恐らくこの試合が今日の最後の試合になるだろう。


(負けても命を取られるわけじゃないし、とにかく楽しんでいこう)


そういった軽い気持ちで試合は始まった。
< 36 / 203 >

この作品をシェア

pagetop