君を忘れない
「ありがとうございました」


22-24


結局、いいところまではいったのだが負けてしまった。


「小山、わりい」


大学からバドミントンを始めた僕が足を引っ張っていたのは言うまでもない。


「いいですよ、こっちもかなりミスしましたし。

けど、やっぱトラさんは上手いですよ」


「いや、全然大したことないよ。

ああ、もっと上手くなりたいわ」


両腕を広げてわざとオーバーアクションで言うと、下を向いて笑った。


「それは誰だって思ってますよ。

それじゃ、また試合しましょうね」


そう言うと、足早にロッカーへと向かっていった。



かなり熱い試合をしていたうえに、今日の暑さで体育館の中もかなりの暑さになっていたということもあり、汗が流れるように出てくる。

けど、練習前の汗とは違って、かなり心地いい汗だ。


「なんか、久しぶりに2人がちゃんと会話しているのを見ましたよ」


四盛が両手で頭の後ろを抱えながら話しかけてきた。

確かに、今思うとかなり自然な会話だった気がする。

去年まではこれが当たり前だったのにと思うと寂しくなるが、この1年間の2人の会話を考えれば妙な達成感がある。

こんなのではいけないのだが・・・


「ほら、早く着替えて降りましょう。

折角、仲直りしたのにまた怒られますよ」


仲直りにはまだ相当な高い壁があるだろうし、仲直りというとまたちょっと違う気がする。

まあ、一歩前進したことは確かかな。
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