君を忘れない
体育館から飲み屋のある集合場所の駅の出口へと移動する。

この距離が意外に長くて面倒くさい。


「暑い。

もう6月だというのに、めちゃくちゃ暑いですね」


「暑い、暑いって言うなよ。

余計に暑くなるだろ」


実際、6月だというのに暑い。

梅雨を通り越して、いきなり夏が来てしまったようだ。


「あーあ、飲み会面倒くさいな」


「出た。

『向こう側』理論」


この2人はいつもこんな感じだ。


「トラさん、一緒に飲みましょうね。

じゃなかったら、俺たち帰りますから」


「おいー。

俺が全責任負っているみたいじゃん」


こんな感じだから、小山には怒られてばかりだ。



飲み会の集合場所に着き、ロータリーを素早く入れ替わる車やバスを眺めながら飲み会の準備ができるまで待つ。

6月だが、この暑さとあって半そでの人が多い。

6月・・・


「あっ」


そうか、もう6月なのだ。

暑さのせいか、すっかりそのことを忘れていた。


「どうしたんですか?」


不思議そうな顔をして、さっきの2人が問いかけてきた。


「お前ら、ちょっと飲み会前に俺に付き合えよ」


「出た。

『向こう側』理論」


こいつはそれしか言えないのか。

けど、案外こいつらが丁度いいのかもしれない。


「別に『向こう側』とか関係ないよ。

ただ・・・」


「ただ?」


少し間を置いてから、2人の肩に腕をかける。


「いつも小山に怒られているお前らに、復讐の機会をやるよ」
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