君を忘れない
「小山」


この声の主は誰だか検討がつき、今はそいつと話したくない、というよりは話しても何も解決しないことが分かりきっているので気づかないふりをする。


「おい、小山」


さっきよりも大き目の声を出し、肩をつかんできたので振り返ると予想通り四盛がそこに立っていた。

顔を見た感じだと、まだそこまで酒は回っておらず酔っ払ってなさそうだ。


「機嫌悪そうだな」


「当たり前だろ」


なんでそんな分かりきったことを聞いてくる。

あんなことをされて機嫌が悪くならないはずがないだろう。


「トラさんか?」


「あいつが飲み会に来ないのは別にいいよ。

だけど、3年2人を一緒に連れて行くのはおかしいだろ」


トイレの外では飲み会ではしゃいでいる連中の声が聞こえてくるが、中には今は俺と四盛の2人なので、この声は大きく響き渡った。


「あの人には、あの人なりの考えがあるんだろ」


何の考えだよ。

3年2人を飲み会に来させないようにして、なにが考えだよ。

ただの最低の行動としか思えないだろう。


「なんでだよ!

お前はいつもそうやってあいつの味方ばかりする。

俺一人が裏切られたんじゃない、あいつの行動は俺たちを裏切ったんだぞ」


四盛が下を向き黙る。

俺たちということは、こいつも含まれるのだ。

それに、かよっぺだって・・・

俺たち3人はあいつに裏切られたんだ。


「やっぱり、お前に全部話さないと駄目だな」


そう言うと、四盛は飲み会へと戻っていった。
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