君を忘れない
静かなトイレに一人取り残され、再び窓の外を見る。

先ほどと変わらずにネオンが輝いていて、その輝きの中を色々な年齢層の人がそれぞれの目的地へと足早に向かっている。



一体、どういうことだ。

全部話さないとって、全部ってなんだよ。

俺は知らなくて、お前が知っていることでもあるというのか。

もし、あるというのならばお前はなんでそのことを知っていて、なんで俺に話してこない。

俺の知らないことってなんだ・・・

今度はこのことが頭から離れなくなってしまうじゃないか。


「くそっ」


一気に頭の中にすべてのことが流れ込んでくるような感覚がたまらなく嫌で、ついつい壁を強く叩いてしまい、一人でうずくまって痛みに耐えた。



頭の中を整理し、手のひらの痛みも治まり、飲み会をやっている部屋に戻るとあの人に連れてかれたはずの2人が来ていた。

まだ、一次会が終わるまで30分以上はあるから、二次会から来ると言っていた割には早い。

しかし、辺りを見渡すと、2人は来ているというのに連れて行った本人はまだ来ていないようだ。


「はい、すいませーん」


俺が戻ってきたのを待っていたとばかりに2人は大きな声を出した。

そして、にやにやとこちらを見ている。

何をしようとしているんだこの2人は。
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