君を忘れない
「真一!」


かよっぺが俺の肩を引っ張る。

別に殴りかかるわけではないが、かよっぺにはそれくらいの勢いにみえたのだろう。

だけど、俺は本当はこんな風に怒ったりしたくないのだ。

俺だって飲み会が毎週あるのはやっぱり反対だし、下の学年がそういうことを口にする気持ちは本当によく分かる。

だけど、今こうして怒りに身を任せてしまっているのはどういうことか。


「あんた4年だろう。

あんただって3年のときに辛い思いしただろ。

そんなの放っておけばいいじゃないか。

中途半端に優しくされると、された方が困るんだよ!」


かなり強い口調で言ったので、息があがっている。

かよっぺの腕を振りほどき、呼吸を整える。


「なんでだよ・・・」


駄目だ・・・

視界が少しずつ滲み出してきた。


「なんで、なんで今度はやるんだよ」


話そうとすればするほど、涙が出てきてしまう。


「あの時、あんたは何もやってくれなかったじゃないか。

やろうともしてくれなかったじゃないか。

あの時、俺たちはあんたを信用していたんだ。

なのに・・・」


ようやく分かった。

いや、初めから分かっていたのかもしれない。
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