君を忘れない
3年になってから、いや、もしかしたらあの日からこういうことになることは分かっていたのだろう。



きっと、トラさんは最上級生になる4年になったら、2年のためにOBに話してくれるはず・・・

と。



俺の時にはまだ3年で何もできなかったから、4年になったらやってくれるだろう・・・

と。



俺はこの1年間、トラさんに対して怒っていたのではなく、ただ単にトラさんに協力してもらえる2年に対して妬いていただけだったのかもしれない。


「俺が・・・

どんな気持ちで小さくなっていくあなたの背中を見たと思っているんですか?」


声が掠れている。

自分の感情に気づいたとしても、素直にそのことを伝えられない自分の性格がもどかしく、自分が泣いていると思えば思うほど余計に涙が止まらなくなる性格がやるせなかった。



滲んだ景色から1年前の情景が思い出される。

あの時は背中を向け合っていたが、今は本人と向き合っている。



右手で涙を拭うと視界が綺麗に広がり、目の前に立っているトラさんがはっきりと映った。

これだけは・・・

これだけは絶対に言っておかなければいけない。


「なんで、あの時否定してくれなかったんだ。

なんで、何もやろうとしてくれなかったんだ。

俺は大好きな先輩にあんなことをされて、一体どれだけ傷つき泣いたと思っているんだ!」
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