君を忘れない
俺が会長になりたいって、あんたに初めて打ち明けたときだ。

あんたというよりは、自分以外の人に初めて打ち明けたんだ。

こんな笑顔で俺の話を聞いてくれていたなんて、今じゃ想像もつかないよ。


「誕生日おめでとう!

プレゼントは顔面にシュークリームあげまーす!」


去年の誕生日のときの飲み会だ。

ここでもあんたは俺に対して笑顔なんだな。

笑顔で俺の顔面にシュークリームを塗りたくっている。

こんなことをやり合う仲だったな。

そういや、来年、つまり今年はチョコレートケーキでお願いします、って言ったっけな。


(チョコレートケーキは全く期待できないな)


「お前たちのやりたいように運営していけばいいさ。

俺はただお前たちのサークルを楽しむだけにお邪魔させてもらいに行くだけだよ」


嘘だ。



今日はもう1年前のあんたを相手にするのは止めよう。

頭が余計にズキズキしてくる。

部屋の照明がなんだか眩しく感じたので、ちょっと薄暗くした。

完全に消して、このまま寝てしまってもいいのだが、あの人のことを考えたら懐かしい曲を思い出し、無性に聴きたくなった。



フォルダを探し、お目当ての曲を見つけるのはそんなに困難な作業ではなかった。

久しぶりにこの曲を聴いた。

あの人が大好きで、うちに来ると必ずこの曲を2・3回は聴いていたな。

あの時は何回も聴いたから、歌詞も覚えて歌うこともできた。

しかし、本当に久しぶりに聴いた今は呟いても間違ってばかりだった。



曲を聴きながら、ふと気になり時計を見た。

時計の針は夜中の1時を指していて、1年前のあの人を相手にしているうちにこんな時間になってしまっていた。

音楽を止めよとしたが、なんとなく聴きながら寝るのも悪くないなと思い、そのままにしてベッドに横になった。

だんだんと意識が薄れていく。

長い一日が終わる・・・
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