君を忘れない
「どうして・・・

どうして、そのことを話してくれなかったんですか?

話してくれれば」


「その話を聞いたら、真一だったらそれまで以上にトラさんの考えを実践しようとするし、OBにだって反発するでしょ」


今度はかよっぺが間に入ってきた。

どうやら、知らなかったのは俺だけだったらしい。


「そうしたら、今度は真一がOBに嫌われちゃう。

それだけは避けたいと思って、トラさんはずっと黙ってたのよ」


そんな・・・

じゃあ、トラさんは俺を裏切ったんじゃなくて、俺を守ってくれたということなのか。

ずっと、ずっと俺に嫌なことを言われながら、俺に嫌われても1年間ずっと黙っていたというのか。


「それから、これは四盛も知らないことだけど、四盛は絶対にトラさんの傍に来るだろうから、私は真一の傍にいてやってくれって。

きっと、仲が悪くなるだろうから、あいつの味方であってくれって」


なんで、ずっと黙ってたんだ。

そこまで考えてくれていたのに、俺はあなたに最悪なことしか言ってこなかったし、最低な行動しかしてこなかった。

俺のことをそんなに考えてくれていたのに・・・


「トラさん。

あなたの口から本当のことを聞きたい。

本当のことを話してください。

それとも、俺には本当のことを話してくれないんですか?

俺たちの友情って、そんなもんだったんですか!?」


四盛でも、かよっぺでもない。

トラさんの口から本当のことを聞きたいのだ。
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